足かけ後転(後方片膝かけ回転)から始めよう!

逆上がりではなく・・・

 鉄棒の中で一番有名な技といえば、「逆上がり」だという事に異論を挟む方はいないだろう。この技は鉄棒の登竜門になっていると言っても過言ではない。日本の小学校では多くは二年生から行われる。それは学習指導要領の運動の例示に出てくるからだ。しかし、この技は結構難易度が高い。それは上がる技だからであり、上がるためには体を持ち上げるための筋力が必要になるからである。もちろん保育園児や幼稚園児でも、痩せていたり、筋力があったりする子はできやすい。しかし多くの小学生はこの技で悪戦苦闘し、鉄棒に対する興味を失っていく。
それに対して回転技は上がるために筋力を使う必要がない。落ちていくエネルギーをいかにロスなく使えるか。そのことにかかっていると言える。(ただし、鉄棒にぶら下がったり、体を絞めるという最低限の筋力はもちろんいる)つまり、筋力が余りない子や、ぽっちゃりしている子でも、体の使い方次第でマスターすることができるわけである。

回転技(足かけ後転)から始めよう!

では回転技の中で、どの技が最初の技として好適だろうか。それはズバリいわゆる「足かけ後転(足掛け後ろ回り)」である。学習指導要領では後方片膝かけ回転という技名で記されている。後方(に)片膝(を)かけ(てする)回転ということである。(腕で支持した状態の技であれば前方支持回転という名になる。)鉄棒の技の名前の表記は様々あるので、今後一般的に使われていてわかりやすいものをまず表記し、学習指導要領で表記されているものを(  )で表記することとする。
では足かけ後転を最初の技にする理由は何か?それは大きく以下の五つである。

1. 足を掛けているので大きな落下の危険性が少ない
この技では手で鉄棒を持つとともに、常に片膝が鉄棒にかかっている。そのため手が外れても、そのまま落下するという心配がない。鉄棒が苦手な子には(怖い)という気持ちが強い子が多いが、これならば(少し)安心である。逆上がりですら、もう少しでできる段階までいくと、失敗した場合下半身をかなり大きく落下させる事になる。鉄棒の技の中では、最も安全に、安心して取り組める技が「片足かけ後転」だと言っていいだろう。

2. 筋力が余りなくても、ぽっちゃりしていてもできる
ここに子供が十人いるとする。一定の期間で、この全員にある技をできるようにさせるとしたら、一番可能性が高いのがこの「片足かけ後転」である。「逆上がり」でももちろん不可能ではないが、かかる期間がこの技の方が短くてすむことは明らかだ。それは前述のように、回る技というのは元々ある位置エネルギーをロスなく回転に使えばできるからだ。つまり上手になれば、自分で力を生み出す必要がない。(位置エネルギーのロスが大きい段階では、強引に回る力を付加する必要あり)だから、体型や筋力が十人十色であっても達成しやすい技なのである。

3. 回転の中心を決めやすい

回転するためには、回転の中心を決めることが必要になる。しかも、位置エネルギーが無駄にならないようにできるだけ早めに回転の中心を決めなければならない。そして回転中はその中心がぶれてはいけない。支持回転(腕立て)系の技(逆上がりも同じ)では、回転の中心はお腹であり、中心を早めに決めにくく、ぶれやすく、その保持に筋力も必要だ。片足かけ後転は、鉄棒に膝をかけたところが回転の中心になる。決めやすく、ぶれにくい。そのため技の習得は、他の技に比べてかなり容易になる。

4. かけていない足を回転力を増すために使うことができる
②で述べたように、上達してくると回転系の技では位置エネルギーを利用して回り、自分で回転のための力を作り出す必要はない。しかし、最初の時期では回転中エネルギーのロスが大きく、位置エネルギーをうまく生かすことができない。そのため自分でも回転力を付加する必要があるが、足かけ後転の場合、かけていない方の足を利用することができる。(例えば、両膝かけになると、空いている足はなくなり、回転力を付加することはできなくなる。)うまく使えば足の力は大きく、回転力を増すための大きな助けとなる。

5. 何よりも回る事は楽しい!(しかも縦回転)
あなたは地面の上でくるくる回って遊んでいる子を見かけたことはないだろうか?。子供には「回ってみたい」発達要求があると言われ、回る事に大きな楽しみを感じているのだ。しかし、自分で立って回るにしても、回る遊具等で遊ぶにしても、ほとんどは横回転である。しかし、鉄棒運動は縦回転(横回転も可能)。日常ではなかなか味わうことのできない感覚であり、その感覚は多くの子供達を夢中にする。連続してできるようになった子は、嬉々としてしかし、ほとんどの子供が、鉄棒を嫌ってこの感覚を知ることなく大人になっていくのは残念なことだ。回ることは楽しい。楽しいからできるようになりたい。回転技が初めてできた時の喜びはとても大きいものだ。

今回は鉄棒に最初に身につけるのに好適な技として「足かけ後転」を紹介した。次回からはどうしたらできるかというコツを解説していく予定だ。是非多くの人に最初の技として、まずこの「足かけ後転」を身に付けてもらいたい!

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