いよいよ回り始めたわけであるが、回る技なのだから当然体は鉄棒を中心に円を描かなければならない。円を描いて回っていれば、位置エネルギーをロスすることなく回っていくことができる。ロスなく回ることができれば、技の達成にはそれほど筋力は必要ない。しかし、この④の段階で多くの場合大きくエネルギーをロスしてしまう。
怖いと体は縮こまり、腕は曲がる
怖いという気持ちが起こると人の体はどうなるのだろうか。これは多分動物ならみんな同じだろうが、緊張して力が入り体は小さく縮こまってしまう。このことは回転技を成功させるための大きな障害となる。まず、体が小さくなることで回るエネルギーも小さくなる。また伸ばして大きくしている体を回転途中で小さく縮めることで、体は円を描かず、直線的に下に落ちていく事になる。そうするとさらに怖いという気持ちは増大し、反射的に鉄棒を握り、つまりはブレーキをかける事になる。
やっている子が怖いと思っているかどうかは、ある部分だけでも判断することができる。回転開始直後の腕である。怖いと感じたら、この段階で曲がっているはずだ。もし、怖くないのに反射的に腕を曲げているのなら、腕を伸ばすように助言するだけで、腕を伸ばして回転することができる。しかし、多くの場合回転を経験をしたことがないために、体が回転すること自体が未知の領域である。従って脳は当然恐怖を感じ、怖いと思って腕を曲げてしまうことが多い。
下に(落ちる)ではなく、外に(回る)
今まで回る技を体験したことがなく回るという感覚がない場合、前述のようにどうしても体を下方向に落としてしまう傾向がある。これは足かけ後転(回転技全般)ができない一番大きな理由だと言っていいだろう。位置エネルギーを回転のためのエネルギーに変えるには、回転の中心から外向きの力が必要になる。人間の腕や体がもともと硬いものであるならばそれは必要ないかもしれないが、人の体は柔らかく曲がりやすい。だから、外側に意識的に引っ張ることで、伸びた体が大きな状態を保つ努力をしなければならない。(もともと回転すると自然と外側に引っ張る力が生まれる)
必要があれば、回転力をプラス
もともと片足かけ後転では、位置エネルギーをできるだけロスなく使えば、それだけで回ることができる。自分で回転力を作り出す必要なほとんどないと言っていいだろう。しかし、練習を始めた段階ではエネルギーのロスが大きく、みるみるうちにエネルギーは失われて、回転に失敗することが多い。それは仕方ないことである。そこで必要に応じて回転力をプラスしてやる。そこで役に立つのは、鉄棒にかけていない方の足である。この足の使い方は回転力を得る方法として、逆上がりの時にも役立つので、覚えておくと良い。足をピンと伸ばした状態で締めて固め、それを足の付け根を中心にして大きく振るのだ。あまりエネルギーのロスがない子(人)が、思い切りとこの動きをすると、回転力が大きくなりすぎて、回りすぎてしまい危険なので注意が必要である。最初は足を使って回転力を増して技を成功させ、その後少しずつ足の振りを小さくして、位置エネルギーだけで回れるように技を熟練させていくといいだろう。
自分の体が自分の思うようには動かない。これはよくあることで、ごく普通のことです。人は、思うように体を動かせるようになるために、色々な運動をします。基本的に運動は遊びであり、楽しいからするものですが、自分の体を自由自在に動かすためのトレーニングにもなっていることは間違いありません。その意味でも鉄棒を練習することは、特に子供達には有意義なことだと思います。