さて、このコツ③「位置エネルギーを大きく」であるが、数あるコツの中でも最も重要な部分だと言ってよい。繰り返し書いているが、回転技では基本的には位置エネルギー(体が下に落ちていくエネルギー)をロスなく有効に使って回転に生かす。目指すのは自分で力を加える事なく、体の使い方によって、位置エネルギーだけで回る事なのだ。
位置エネルギーが大きいかどうかはお尻の位置で判る
コツ①②でふり足を前に小さく振って、その反動で後ろに大きく引いた。そして、③では片膝が一挙に鉄棒にかかった状態である。その状態を見てみると、お尻が鉄棒と同じ高さにある。(鉄棒より高くてもいいのだが、位置エネルギーが大きすぎると、回りすぎる可能性もあるので注意が必要だ。)お尻の位置が上半身の高さを表しているわけだ。腕を伸ばし、胸を張り、お尻の位置が高くすることができていれば、回転開始の状態としては完璧だ。大きな位置エネルギーを確保できている事になる。
お尻の位置が高くなるようにふり足を振る
お尻の位置を高く保つためには、コツ②から③にかけての後ろへの足の振り方が重要になる。この振り方が弱かったり、斜め下方向に向いているとお尻は下がってしまう事になる。勢いよく、斜め上方に向けて振るぐらいの気持ちで振る。またこの時、足が曲がったり緩んだりしていると、うまくいかない。足は伸ばしギュッと締め、棒の様にして付け根から振ると、その足に引っ張られて体が後ろに大きく移動する。上手になってくれば(回転エネルギーをロスなく使えるようになってくれば)このような動作は小さくても大丈夫だが、最初のうちは全ての動作を大袈裟なぐらいに大きくする方がよいだろう。
後は如何にしてこのエネルギーを失わないか
この回転開始時のコツ③の状態を図のようにできれば、後はこの位置エネルギーを失わないようにして回っていくかが最も重要になる。体を締めることは必要になるが、位置エネルギーだけで回転するには十分であり、筋力によって別に回転エネルギーを付け足す必要はほぼない。しかし、理論上はそうだとしても、そうは問屋が下さない大きな壁が待っている。それは「恐怖心(怖いという気持ち)」である。③の状態でも体の位置が高い事で、すでに「怖い」と思っている人もいるだろう。しかし、回転が始まるとさらなる大きな恐怖が待っている。体が下に落ちていって回るのだから、怖いに決まっている。いや、それが後には「気持ちいい」に変わっていくのだが・・・。
「恐怖心(怖いという気持ち)」には勝てないと、私は常々思っている。自分自身も経験があるし、子供達を指導していてもそのことを強く感じる。この事についてはまた別の項で書きたいが、取り敢えず先にこれだけは言っておきたい。怖がっている子(人)に向かって、「怖くないよ!」「大丈夫!」なんて絶対に、絶対に言ってはいけない。